弁護士由井照彦のブログ

法律の視点からの社会・事件やリーガルリサーチについて

にほんブログ村 政治ブログ 法律・法学・司法へ

日々の事件で法律を解説

刑は有限?−刑の「重さ」を考える

ここ3回の投稿で高速道で自動車を停止させた死亡事故を題材に刑法の思考を説明しましたが、これに対し、事件の悪質性や被害者の残された子を考えると「死刑か無期懲役くらいじゃないと納得出来ない」という意見をいただきました。一般の方の感覚としては当…

どれくらい塀の中に?−言い渡される刑の幅

一昨日、昨日の投稿で刑法がより悪質な犯罪を抑止しようとしていること、故意の判断プロセス等を説明したところ、「被害車両を停止させた容疑者と後ろから追突したトラック運転手が同じ罪名なのは納得がいかない」というもっともなご指摘がありました。そこ…

心の中をどう覗く?−故意は周りから

昨日の記事について、「一般人は殺人で起訴できるかも知れない」と思っているという鋭いご指摘を受けました。そこで、刑法が強い社会的非難が向けられ、重罰を科すべきと規律する「故意」についての判断過程を少し説明しようと思います。 昨日説明したとおり…

「殺す」と「死なせてしまう」の差−法律は実は甘くない

記事のような悪質な過失致死事件が報道されると「人を死なせたのに過失致死程度だなんて」「殺したも同じだ」というような人が一定数います。そして我が国の刑法(特別法を含みます)やその運用に携わる裁判官・検察官・弁護士を「甘い」と評価する人もそれ…

内部留保に課税する?−収得税と財産税で議論を整理

希望の党が公約として消費増税を凍結し、代替財源として企業の内部留保への課税を検討していることについて「内部留保=悪だというのは共産党と同じリベラルで左な発想だ!」vs.「消費増税凍結のためには仕方ない」等という恐ろしく粗雑で中身がわかりにくい…

保守やリベラルって何のこと?−憲法の規定から整理すると

総選挙公示を控えて政党再編が喧しく、「穏健な保守」「リベラル」等という思想用語のようなものが飛び交っています。しかし、そもそも「保守とは何か?」「リベラルとは何か?」について明確に語られることが少なく、議論が非常にわかりにくくなっています…

気づかぬ内に消費者金融?−銀行カードローンの仕組み

記事のような銀行カードローンの問題を考えるにあたっては、おカネの貸し借りに関する基本的な法的仕組みを理解しておくことが非常に有益です。 まず、記事で言う「総量規制」とは貸金業法に定めがあり、 貸金業法13条の2「①貸金業者は・・・個人過剰貸付契…

どこで思いとどまるか−予備→未遂→既遂の流れの中で

記事の郵便局員は相当な胆力ですが、それはともかく、記事のように犯罪を「思いとどまる」ことを我が国の刑法が重視していること、そしてそのための仕掛けを知っておくことは、今後も次々に起こる新手の犯罪やそれを罰する新法の是非を考えるにあたってとて…

不正合格の後始末-法律による行政の悩ましさ

記事の山梨市長の件は、元妻が山梨県警ではなく、警視庁に逮捕されて、その後やはり警視庁が市長本人を不正採用の件で逮捕していることからは、そもそも贈収賄事件を目標として警視庁が捜査していたようにも思われますが、それはともかく、不正合格させても…

一線超えたら何がまずいか?−不倫と貞操義務

今井氏のネタで「2人で同室お泊りすれば一線を超えたも同然」「あの手のつなぎ方は一線を超えている」とかいうある意味童貞臭のする議論は実は法律的にも興味深くはあります。 不倫でまずもって問題となるのは、不倫相手と男女の体の関係があったか?という…

富裕層が海外逃避?−もう1つの出国税

記事にある観光庁長官が検討している「出国税」は一般人向けに構想されているものです。この新税の是非を議論するにあたっては、従来からある「もう1つの出国税」との違いを意識することは有益です(ちなみに、出国税については何回かに分けて説明するつも…

法律と歴史・社会−戸籍についてあえて触れなかったこと

前回、我が国の戸籍という書類の特殊性と戸籍制度の長い長い歴史について説明し、我が国の法制度を前提にすると戸籍の公開には極めて抑制的であるべきことを指摘しました。 気づいた方も多いと思いますがその際に1つ敢えて触れなかったことがあります。もち…

戸籍は大事−蓮舫氏の二重戸籍問題から考える

16/9/15の記事で説明した通り、我が国の公職選挙法は国会議員の被選挙権について 公選法10条「日本国民は・・・被選挙権を有する」 と規定し、これは外交官になる要件を定める外務公務員法が 外務公務員法7条「・・・国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者…

入れ墨はアート?−違法と違憲

我が国の法は、まず、頂点に「憲法」があり、その憲法によって立法権を与えられた国会が「法律」を制定する、という構造です。そして法律が憲法に反するかどうかを判断するのが裁判所です。 ここまでは、中学校等でも習うのですが、法律と憲法が具体的にどの…

逮捕・捜索されなければいいのか?−法務省見解の意味するところ

共謀罪について条文案が明らかとなった直後に法務省が記事にある通り「犯罪を合意しただけでは、逮捕や家宅捜索はできない」との見解を出しました。これが何を意味するかは意外と大事なのではないかと思います。 捜査機関(警察や検察)が「捜査」活動が出来…

賄賂は申込んだだけで処罰される

鴻池元防災相が「無礼者!」と言って投げ返したのは、事実とすれば中々のパフォーマンスですが、それはともかく、この問題についての森友学園理事長の言い訳は、法的にはかなり興味深いものです。 政治資金規正法の枠外で政治家にお金を渡す場合に問題となる…

養子制度は誰のため?−「法律の趣旨」の割り切れなさ

法律の趣旨が法律の条文文言や条文構造により導かれることは、16/10/4の記事で少し書きました。 記事にある節税目的の養子利用は、その「法律の趣旨」がそう割り切れる問題ではないこと、そしてその割り切れなさの隙間に思いがけない目的が割り込んでくるこ…

知らなきゃ悪くない?ー故意の意味

英孝氏を擁護する理由を聞かれると(私を含む)多くの男が「明日は我が身」と思うからのような気がしますが、それはともかく、英孝氏の弁明や擁護論を法律的に構成すると、彼には「故意が無かった」ということになります。 そして、英孝氏や彼の擁護者を批判…

そこに愛はあったの?ー「淫行」とされるSEXとは

個人的には17歳の女性から「23歳」と言われて、嘘を見抜く自信はありませんが、それはともかく、英孝氏の行為の何が問題か?は、それほど単純な話ではありません。 この問題を考えるにあたっては、我が国の法律が未成年者とのSEXについて、どのようなス…

共謀罪について冷静で有益な議論をするために

共謀罪についての議論が喧しいのですが、「喫茶店で話すだけで捕まるvs条約上制定義務がある」というような荒っぽい対立軸が強調されています。 共謀罪の是非を考えるためには、 「現行法上『共謀』はどの範囲で罰せられるか?」を押さえて、「現状に加えて…

租税回避と課税当局の戦い

ロナウドらサッカーのスター選手が租税回避をしているとの報道が続いています。 10/26の記事にも書いた通り、租税回避は租税公平主義(等しき者には等しく課税・異なる者には異なる課税)と租税法律主義(租税を課すには事前に明確な法律で定める)が両立し…

賭博罪とカジノ

カジノを特区で解禁するか否かの議論が「経済効果vs依存症等の害悪懸念」という構図で論じられていますが、そもそも我が国で賭博はどのように扱われているか、という基本を抑えることは重要です。 賭博についての原則は刑法に定めがあり、 刑法185条「賭…

家族と専従者控除−婚姻と税のややこしさ4

日本においては配偶者控除という税の問題と、企業が行う配偶者手当が何故か連動しているため、配偶者控除見直しの議論が出ると、記事のように企業の支払う給与にまで問題が波及します。 ところで、税が婚姻に配慮している制度はほかにもあり、配偶者控除の議…

共謀や共犯とは一体何か?

暴力団犯罪に限らず、複数の人が関与する犯罪について、容疑者が「共謀を否認している」という報道がなされていることはよくあります。この報道から事件や犯人相互の関係性等を想像するには、そもそも「共犯とは一体何か?」を知ることが有用です。 刑法は「…

租税回避への対処法

記事のように富裕層を国税庁が監視するのは、9/30に書いた租税回避への対応の1つです。 しかし、租税回避と言われても具体的にはどのような事態・行為なのかがイメージしにくいと思います。そこで、租税回避の「最も素朴な」手法である同族会社における租税…

外国での犯罪を処罰できるか

国際間の移動が容易になったことから、記事のように外国人が日本で犯罪を犯して、すぐ出国し母国に帰るという事態は増えてきています。 その場合に犯罪地の国が相手国に求める対応は大きく分けて①身柄の引渡し、②代理処罰の2つです。 身柄引渡しは犯人を国…

事実はなかなかわからない

高畑氏の件では、当初報道・弁護人の声明・後追い報道数種、と色々なことが報道されています。このことは、私たち弁護士などの法曹の考え方の一端を説明するのにとても示唆的です。つまり、「事実はなかなかわからない」ということです。 司法試験に受かると、…

そもそも所得とは何か?−婚姻と税のややこしさ3

配偶者控除と夫婦控除については、百家争鳴となった上で、先送りされそうです。 我が国の税収の52.6%が所得税・法人税・住民税・事業税等の「所得」に対する課税です。また、資産に対する課税の内、贈与税と相続税は所得に対する課税とも考えられる税です(…

法律の「趣旨」の考え方−ゲス極川谷氏を題材に

彼の恋愛スタイルはある意味一貫しているように見えますが、それはともかく、今回の件で「法的に悪いのは飲酒した未成年者か?飲ませた成年者か?」を考えることは、私達法律家がいつも気にする「法律の趣旨」を説明するのによい題材です。 「法律の趣旨」と…

租税回避の何が問題か?

パナマ文書の発見により、租税回避地(タックス・ヘイブン)を利用した、不当な税金逃れが問題となっています。しかしそもそも、「租税回避」と「脱税」はどう違うのか?脱税ではないのに何が問題なのか?等、基本的事項ついては意外と知られていません。 ま…

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ